机の下に隠れるお母さんと男の子 マスクをした四人の家族

【吉祥寺・久我山】アサーティブフィットネス、パーソナルトレーナーの小森祐史です。

前回の記事では災害時に必要な『行動体力』についてお伝えしました。

防災に必要なトレーニングを考える(フィジカル編)

被災場所から避難するためには移動できる力が必須であり、それは通常のスクワットだけでは鍛えることができません。
そこで移動に必要な体力を鍛えるトレーニングを3つ紹介しました。

今回は、健康に生活するための体力『防衛体力』の鍛え方をお話します。

予測不能な状況でも、日常と変わらない生活が送れるよう準備していきましょう。

 

災害によるストレスとどう向き合うか?

マスクをする若い女性に中高年の女性が不安な気持ちを伝えている

災害時には体と心、両方にさまざまな変化が起こります。
急に不安になったり、イライラしたり、下痢が止まらなくなったり。

ストレッサーという刺激をうけて、心身に起こる変化のことを「ストレス反応」と言います。

例えば、騒音というストレッサーに対し不快な気持ちになることはそれにあたります。
気になることがあって寝つきが悪いのもストレス反応ですし、姿勢の歪みで痛みが出ることもストレス反応です。

このようにストレス反応は日常的に起きることで、通常はそれほど問題になることがありません。
しかし、災害のような大きなストレッサーになるとその反応も過剰になります。

災害時に起きやすいストレス反応を下記に並べました。

■こころの反応
恐怖、不安、無力感、集中力の欠如、怒りっぽくなる、イライラ、悲観的になる など

■からだの反応
頭痛、肩こり、下痢、便秘、吐き気、風邪、不眠 など

まず最初にお伝えしたいのはこれらは正常の反応であることです。
地震や火災のようにショックな出来事を体験した後、私たちの体調は大きく変化します。
心や身体が弱いからではありません。

約2~3週間は体調の変化が起こりやすい時期ですが、ほとんどの場合は時間がたつと回復するといわれています。

ですので、いざ災害に直面した時は早く乗り越えようと焦らないことが大切です。
マイペースを心がけ、気持ちとからだを労りましょう。

また、小さなことから生活習慣を整えることは体調の回復につながります。
日常の生活を少しずつ取り戻してください。

しかし、時にはストレス反応が長く続くことがあります。
そのような際は専門的なストレスマネジメントで解決を目指します。

 

医学的効果が高い自己催眠「自律訓練法」とは?

仰向けで目を閉じる女性

災害自体は長期間続くものではなく、できるだけ早く日常を取り戻すことは心身の健康に繋がります。

とはいえ、時には体調がなかなか戻らないこともあるでしょう。
そこで医学的効果が高いストレス対処法を2つ紹介します。

■自律訓練法
ドイツの精神科医シュルツによって考案された自己催眠法です。
緊張や不安の緩和、不眠の改善、疲労回復効果などがあるため、医療分野だけでなくスポーツやビジネスにおいても広く用いられています。

「自律訓練法」は6公式からなり、軽く目を閉じた状態で決まった言語(言語公式)を唱えます。
静かなリラックスできる環境で行ってください。

姿勢は仰向けか椅子に座った状態で。
心の中で公式をゆっくりくり返し唱えます(1~2分が目安)。

背景公式から始め、第1公式が終わったら第2公式へ。
その後、第3~第6公式まで順番に行います。

自律訓練法の公式
背景公式:「気持ちが落ち着いている」
第1公式:「右腕が重たい→左腕が重たい→両脚が重たい」
第2公式:「右手が温かい→左手が温かい→両脚が温かい」
第3公式:「心臓が規則正しく打っている」
第4公式:「楽に息をしている」
第5公式:「お腹が温かい」
第6公式:「額が心地よく涼しい」

自律訓練法を行った後は眠気や倦怠感を感じたり、意識がぼーっとしてしまうこともあります。
そのため、下記に該当する方は行わないようにしてください。

心筋梗塞
出血性の消化性潰瘍
糖尿病(低血糖を起こしやすい)
退行期精神病反応
迫害妄想
誇大妄想など

 

「漸進的筋弛緩法」ならいつでもどこでもリラックスできる

伸びをする人のシルエット

自律訓練法は効果が高い自己催眠法ですが、静かなリラックスできる環境で行う必要があります、
「いつでもどこでも使える」とはいえません。

一度災害が起これば不測の事態が立て続けに起こることは十分考えられます。
慌ただしい日々が続くと理想の環境が整うとは限りません。

場所を選ばずにできるストレス処理法には「漸進的筋弛緩法」があります。 

■漸進的筋弛緩法
内科・精神科医・生理学者のエドモンド・ジェイコブソンが開発したリラクゼーションテクニック。

筋肉の緊張と弛緩を繰り返し行うことで身体をリラックス状態に導きます。
いったん筋肉を緊張させてから弛緩させるので、その落差の大きさから身体がリラックスしていることを自覚しやすい方法です。

各部位の筋肉を数秒間緊張させて弛緩する動作を繰り返します。
姿勢は仰向けでも座位でも立位でも構いません。

ここでは簡易的な方法を紹介します。

漸進的筋弛緩法のやり方
⓪導入 鼻から息を吸って、口からゆっくり息を吐く動作を数回繰り返す

①両手 掌を上にして両腕を伸ばし、親指を曲げて握り込む。筋肉を緊張させてから弛緩する。
②上腕 両肘を深く曲げて上腕全体に力を入れる。筋肉を緊張させてから弛緩する。
③背中 曲げた上腕を外に広げ、肩甲骨を引き付ける。筋肉を緊張させてから弛緩する。
④肩 首をすくめながら両肩に力を入れる。筋肉を緊張させてから弛緩する。
⑤顔 眉間にしわを寄せながら下顎にも力を入れる。筋肉を緊張させてから弛緩する(弛緩すると口がぽかんとした状態になる)
⑥腹 カチカチになるようにお腹に力を入れる。筋肉を緊張させてから弛緩する
⑦足 爪先を伸ばし、ふくらはぎに力を入れる。筋肉を緊張させてから弛緩する
⑧足2 爪先を上に曲げ、腿の前に力をいれる。筋肉を緊張させてから弛緩する

筋肉を緊張させる時間は15~30秒、弛緩させる時間は30~60秒を目安に行ってください。

漸進的筋弛緩法の特徴はすべてを行う必要がないことです。
①~⑧を全て行った方が効果は高いですが、項目を1つ行うだけでも筋肉の緊張を解くことができます。

 

災害は自分ごとと捉えましょう

広げた地図を見る5人家族

「防災に必要なトレーニング」を2回にわたり紹介しました。

能登半島地震はわずか2カ月前に発生した災害ですが、時間が経つにつれて記憶が薄れてきているのではないでしょうか。
とはいえ震災地の復興はまだ始まったばかりで、いつどこで地震が起きるかはわかりません。

日本は発生頻度でも大きさでも世界上位にランクする地震国。
ぜひ自分ごとと捉えて、身体づくりを含めて災害への備えを始めてください。

私も防災グッズや家具の配置などを見直しているところです。

 

能登半島地震の支援を行っています

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