女性にクリップボードを見せる男性

【吉祥寺・久我山】アサーティブフィットネス、パーソナルトレーナーの小森祐史です。

運動指導者にとって必要な素養はたくさんあります。

・筋肉・関節・骨など、解剖学の理解
・筋力トレーニングの方法
・ストレッチの方法

これら以外にも様々な知識や技術を身につける必要があります。

では、それらを完璧に身につければ運動指導ができるのか、というと答えはNOです。

運動指導でも他のサービスと同じようにニーズをきく作業が必要で、それを解くカギが『カウンセリング』です。
カウンセリングは運動指導の際に必要なことで、全ての運動指導者には相談を受ける能力が欠かせません。

この記事では、

カウンセリングとは何か?
現在のカウンセリングの潮流は?
運動指導者、とくにパーソナルトレーナーに必要なカウンセリング能力

について考えます。

 

そもそも『カウンセリング』とは何か?

ソファの上で話し合う男性と女性

『カウンセリング』はアメリカで開発され、20世紀に入ってから発達した学問です。
心理学を下地とした学問でありながら、実践的なアプローチができることが特徴です。

その目的は“心理的な問題や悩みについて専門的な援助をする”ことで、個人対個人のケースではとくにこの能力が必要とされます。

もちろんそれは運動指導でも例外ではありません。
本来『カウンセリング』は心理士や福祉士の方などが行うべきことですが、パーソナルトレーニングは一対一という共通点があります。

実際の指導ではただの会話にとどまらず対話レベルのコミュニケーションを行うこともありますので、心理学の知識やスキル、何よりカウンセラーとしての心構えが指導者には必要と言えるでしょう。

 

カウンセラーは“パートナー”

ダンベルを持った男女が背中と背中を合わせている

現在のカウンセリングの中心は、アメリカの心理学者であるカール・ロジャーズが提唱した『来談者中心療法』と言われています。

カウンセリングというと「カウンセラーが積極的にアプローチしたり」「専門的な知識をもってアドバイスをする」というイメージがあるかもしれませんが、来談者中心療法では“クライアントが主役”です。

クライアントのことを受け入れ、その価値観・考え方に共感し理解しようとすることがカウンセラーの役割であり、それらの行為を通してクライアントが自分自身を受け入れ、自己を成長させていく。

というのがロジャーズの考えるカウンセリング。

つまり来談者中心療法においてカウンセラーは上の立場でも下の立場でもありません
どちらかというと“パートナー”という言葉に近い存在です。

 

カウンセラーに必要な3つの能力とは?

椅子に座り車座になる人達

カウンセリングでは「クライアントの望んでいることを把握する」ことが第一のステップです。

飲食店では食べ物・飲み物、美容院なら髪型などニーズを聴いて商品やサービスを提供します。

しかしカウンセリングは“心のうちに抱えているもの”を探る作業です。

それは一言二言の簡単な会話で済むことではありません。
じっくりと話し合える環境が必要で、そのような状況を作る能力が求められます。

ロジャーズはカウンセラーに必要な能力として以下の3つをあげています。

共感的理解
自己一致・ジュニュインネス
受容

この先はこの3つの能力について解説していきましょう。

 

『共感』と『同感』は別のもの

頭を抱える男性のことを見つめる眼鏡をかけた男性

『共感』に近い言葉に『同感』があります。

しかし同感とは「相手に取り込まれて理解する」ことであり、どちからというと“同情”に近い意味合いがあります。
例えば、友人の家族が亡くなってしまった時に一緒に涙を流すことは同感です。

一方、あたかも「相手の気持ちになったかのように理解すること」が共感です。
上記の例で「泣きたいくらい悲しかったんだね」という言葉を投げかけることは共感にあたります。

共感とは「頭で相手を理解する」ではなく「相手に取り込まれて理解する」でもない、「相手が感じていることを理解しようとする」行為と言えるでしょう。

そして相手の感じ方を理解するためには深く『聴く』必要があります。

『聴く』とは注意深く耳を傾けるきき方で、音や声を情報として受け取るだけの『聞く』とは異なります。

相談に対して“うなづく”“あいづちを打つ”ことは、話を深くきくための技術であり態度です。
その2つを意識するだけで相談者本人は「私の悩みをきいてもらえている」ことを感じ取り、次第に心のうちに抱えていることを話してくれるようになります。

「クライアントの望んでいることを把握する」ために『聴く』ことは欠かせません。

 

カウンセラーには“ありのまま”の態度が求められる

ランニングマシーンを歩くシニア男性と話す男性トレーナー

『ジュニュインネス』とは“ありのまま” でいること。

カウンセラーの態度として重要なのは“自分を隠したり必要以上に良く見せようとする”のではなく、自身の欠点や不完全さも認めてそれを伝えることです。

前述のとおりカウンセラーとクライアントは対等な立場です。
自分の不完全さを知っているからこそクライアントと同じ目線で対話ができます。

例えば回答するのが難しい質問をされた時に

「それはどういこうことでしょうか?」
「次回までに調べてきますね」

と答えることはとても誠実な態度です。
今の自分に足りない部分を正直に伝えることで信用を得られるでしょう。、

一方何となくごまかしたり、質問をはぐらかすことは誠実な態度とは言えず信用を得ることはできません。

そして同じくらい大切なのが『自己一致』という考え方です。
これは理想と現実の自分が一致していないことを認め、理想を目指す一方で現実を理想に近づける姿勢のことをいいます。

理想と現実のズレが大きすぎると悩みの元ですが、少しのズレは努力目標や生きがいに繋がります。
人は誰しも完ぺきではありませんが、理想に向かって努力する姿が素晴らしいこと。

自分が不完全あると自覚しているからこそクライアントを受け止められるといえるでしょう。

 

相互の『受容』は円滑なコミュニケーションに繋がる

バランスボールに乗るシニア男性とその後ろに立つシニア女性

ジュニュインネスが分かると『受容』という言葉の意味も理解できるようになります。

受容とは人間の尊厳に対する気持ちです。

人は一人ひとりかけがえのない人生を送っており、自分の人生の主人公。
どんな価値観をもっていてもそれは大切にすべきです。

例えば家族や友人と円滑なコミュニケーションができるのは、お互いを受容しているからです。
他者を受容し、自己も受容していることで信頼関係ができています。

相談の場で行っていけないことは、自分の指示通りにクライアントを動かそうとしたり価値観を押し付けること。

例えば「水を飲むだけで太る」と考えている方がいるとします。

もちろん体脂肪で体重が増えた訳ではなく水分量で一時的に数字が変化しただけなのですが、ご本人は大真面目に話しています。
真剣に悩んでいる人に対し「水分で増えただけです!」「気にしなくていいですよ!」など、その考え方を否定する言葉を投げかけた方が良いのでしょうか?

自分の個性や価値観を大切にするからこそ、相手の生き方や考え方を受け入れられるのだと私は思います。

 

トレーニング指導と同じくらい大切なこと

椅子に座り談笑する男性と女性

パーソナルトレーニングなど運動指導を受けに来る方は、

痩せたい
姿勢をよくして綺麗に見られたい
死ぬまで自立した生活を続けたい

など叶えたい欲求や願望があり、それを実現するために私たちの元に来ています。

私達はトレーニング指導でカラダづくりをサポートしていますが、その前にすべきことはないでしょうか?

運動指導者はカラダに関する知識やトレーニング技術の取得に熱心である一方、「信頼関係をつくる」という大切な作業を見落とす傾向があります。

お互いを受け入れ、尊重し、コミュニケーションを取りながらカラダづくりを進めていく。

これがパーソナルトレーナーを含む運動指導者全般に必要な能力であり、心構えだと思います。

 

12月29日(日)に「運動指導者のためのカウンセリング」セミナーを開催


2024年12月29日(日)に『カウンセリング』をテーマにした運動指導者向けセミナーを開催しました。

このセミナーでは運動指導におけるカウンセリングの目的と必要性、カウンセラーとしての心構え。
そしてクライアントのニーズを把握し、問題解決を目指すまでのプロセスを解説しました。

気になる方は是非セミナーのダイジェスト動画をご覧ください!
👇