黒い服を着た男性と椅子に座っている女性

【吉祥寺・久我山】アサーティブフィットネス、パーソナルトレーナーの小森祐史です。

今年5月上旬「パーソナルトレーニングにおける事故が増えている」という話題が各メディアで取り上げられました。

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全国の消費生活センターには、パーソナルトレーニング中に起きた事故の相談が寄せられている。
2017年4月から昨年2月までの相談件数は計105件。
相談者の約9割は女性だった。
内訳は神経・脊髄の損傷と筋肉・腱(けん)の損傷が各21件で、骨折も7件あった。
4人に1人は治療に1か月以上かかる重傷だった。
一方、消費者庁が把握した昨年の事故件数は50件を超え、過去最多だという。

(引用:Yahooニュース)
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この数年、パーソナルトレーニングが普及したことで様々なトラブルが増えていることは確かです。
サービスを提供する側の習熟度はもちろん、そのシステム・制度の整備が不十分なことも原因かと思います。

では、この問題を改善するためには何が必要なのか?
今、私が考えていることをお伝えします。

 

事故を起こしているのは「ヒト」です

スクワットをする女性と後でバーベルを支える男性

まず初めに行うべきは事故が起きる原因を考えることです。

例えば交通事故の原因には「ヒト」「クルマ」「道路環境」という3つの要素がありますが、その中でも「ヒト=運転者」が原因である割合が極めて高いことが分かっています。

パーソナルトレーニングの場合、指導するのも受けるのも「ヒト」です
マシンや器具が原因であることはほぼなく、ほとんどがヒューマンエラーといえます。

ですので、今回はトレーナーとクライアントの両方から原因を考えてみましょう。

まずはトレーナー側から。

国民生活センターの報道発表資料(https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20220421_1.pdf)から引用すると

「バーベルを持ち上げた時に腰を痛め、診察したところ骨折が分かった」
「トレーナーの食事指導で湿疹がでた」
「プレートが落下して肩を痛めた」

このような事例がありました。

これは確実にトレーナーの知識・技術不足と言えます。

トレーニングには『日常よりキツイことをしないと肉体の変化を出すことはできない』というルール(過負荷の原則)がありますが、それも程度によります。

ターゲットとする筋肉に負荷をかける際、およそ「10~20回を3~6セット」が目安です。
例えば「3回しか上げられない重さ」にバーベルを設定して、それ以上の回数持ち上げさせようとしたり、軽い負荷でも何十回も同じ動きの筋力トレーニングをさせるとケガの発生率は高くなります。
(もちろん例外のトレーニング法はあります)

また、極端な内容の食事を続けると筋肉量が落ちてしまったり、内臓に負担がかかることがあります。
トレーナーができるのは基本的な食事アドバイスで、専門的な内容であれば管理栄養士が担当すべきでしょう。

安全管理もトレーナーの仕事です。

器具がしっかり取り付けられているか?
床が滑りやすくないか?
お客様の体調はどうか?

など、このようなことは常日頃からチェックしておく必要があります。

 

自分の身体を把握することが事故を防ぐ

スポーツウェア姿の男性と女性が話している

トレーナーの知識・技術不足が事故を招くことはわかりましたが、お客様側から見るとどんなことが考えられるでしょうか?

参考になる例を一つここで紹介します。
これは私が都内のパーソナルジムに勤務していた時の話です。

2か月ほどトレーニングを継続していた40代の男性。

その日もいつものように準備運動から入り、その後に本格的なトレーニングを始める予定でした。
しかし軽く膝の屈伸運動を始めたところ数回でふらつき、その場に座り込んでしまいました。

すぐにお客様に駆け寄ると少しお酒の匂いがします。
普段からお酒を飲まれている方ですが、トレーニングの前日はお仕事の関係で酒量が増えていたようです。

翌日にアルコールが残るほど飲酒をすると集中力が低下します。
また、深酒は交感神経を刺激するため心拍数が増加し、血圧も高くなります。、

この時は私の安全管理が不足していました。
大事には至りませんでしたが最悪の事態もあり得るので、私がお客様の体調をもっとしっかりヒアリングすべきだったと思います。

それと同時に、お客様にもご自身の身体の状態をしっかり把握していただきたいと思っています。

というのは

ストレスの増加
睡眠不足
食事量の不足や欠食

このようなことが重なると事故が起きる確率は高くなるからです。

逆に身体の状態を把握しておけば安全にトレーニングは続けられますので、体調があまり優れない時はそのことをトレーナーにお伝えください。
その時の体調に合わせてベストなトレーニングをご案内いたします。

 

トレーナー資格があれば事故は減らせるか?

スーツ姿の男性と「資格」の吹き出し

話題に上がっている資格の有無についても私の考えを述べたいと思います。

パーソナルトレーナーの場合、柔道整復師や理学療法士のような国家資格はありません。

公益財団法人 健康・体力づくり事業財団
特定非営利活動法人日本トレーニング指導者協会(JATI)
特定非営利活動法人NSCAジャパン(NSCA)
全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)

など、各団体が民間資格を発行しています。

どの団体においても運動生理学、機能解剖学、運動力学など運動指導において必要な専門知識を取得することができます。
確かに人の身体を扱う仕事なので専門知識は必須です。

しかし『有資格=事故が減る』ではないと私は考えています。

というのは資格は最低限の知識と技術を持っている証明で、実際の指導力とは関係がないからです。
それがどのようなトレーナー資格であれ。

資格保持者でも指導経験が少なければ、事故が起こる確率は高くなります。
実際、現場に出たばかりの有資格トレーナーの指導で、お客様がケガをしてしまう場面を何度か見たことがあります。

以上を考えると「資格を保持している」ことは、トレーナーの質の証明にはならないのかもしれません。

 

パーソナルトレーニングの事故を減らすのは「教育」と「システム」

ホワイトボードを指さす男性とそれを見ている人達

私は資格よりも安全に指導できる環境をつくることが大切だと思っています。
そのために必要なのは【トレーナーの教育】と【システムづくり】。

【トレーナーの教育】とは

・専門知識(運動生理学・機能解剖学・運動力学・栄養学・心理学など)
・エクサイズの実践
・カウンセリング
・指導ロールプレイ
・応急処置

等の研修です。

【システムづくり】とは

・安全管理基準とチェックシートの作成(施設・器具・メディカル)
・ビデオカメラの設置
・損害保険の加入

等、お客様が安心して指導を受けられるシステムを作ることです。

教育とシステム、この2本柱を作ることで現在よりも事故の確率はグッと減らせると思います。
というのは私自身もお客様にケガをさせてしまった経験があり、それ以降上記を見直すことで安全に指導ができるようになったからです。

今回の報道は今一度「安全な指導」を考えるきっかけになりました。
現在、改めてパーソナルトレーニングの安全管理基準や契約書の内容を見直しているところです。

今後も事故がなく、楽しく効果的なトレーニングを提供できるようサービスの向上を目指してまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 

最後になりましたが「資格を保持すること」を否定する内容ではありません。
私自身、民間資格を取得することでトレーニング指導に必要な専門知識を身に付けることができました。
しかし、安全に指導するためにはそれだけでは不十分というのが私の考えです。

 

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