
【吉祥寺・久我山】アサーティブフィットネス、パーソナルトレーナーの小森祐史です。
「中高年女性に必要なトレーニング」の後編です。
前回は男女の身体の違い、そして排泄や出産と関わりが深い骨盤底筋の役割、そのトレーニング法を紹介しました。
人生後半戦のことを考えると、デリケートゾーンの筋肉はしっかりと鍛えたい場所です。
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さて、後編の記事では年代による女性の身体の変化を考えます。
10代の思春期は女性ホルモンの分泌が増加し、月経が始まる時期です。
乳房が発達し、骨盤が広がるなど、いわゆる「女性らしい」身体つきに変化していきます。
女性の第二次性徴は男性よりやや早く、8〜9歳に始まり15歳ごろにピークを迎えます。
20代は体力、代謝、肌の弾力などが最も良好な時期です。
月経の周期が安定し、妊娠・出産に最適な状態を迎えます。
30代から徐々に基礎代謝が落ち始め、40代の更年期へ。
骨盤と同じくホルモン量も男女で大きな違いが見られます。
思春期以降、男性の場合は男性ホルモンが作られ続けますが、女性は40代でガクンとホルモン量が減り、閉経後はゼロに。
つまり、人生の半分は女性ホルモンのない状態で過ごすことになるのです。
閉経を迎えた50代以降は、骨粗鬆症や高血圧、糖尿病や心疾患のリスクが高まります。
また、筋力やバランス力が低下して転倒しやすくなるので、意識的に運動することは必須です。
人生の後半、ホルモンがない状態でも楽しく健やかでいるための方法を考えていきましょう!
男性も更年期のトラブルに備えてください

40歳を過ぎた頃から現れる体調不良・情緒不安定などの症状を『更年期症状』といいます。
更年期とは性成熟期(18~45歳)と老年期(55歳~)の間の移行期のことで、一般的に閉経前後の5年間、合計で10年間をさします
以前は女性特有の疾患といわれていましたが、同じような症状が出ることから男性の方にも無関係な話ではありません。
女性の場合は女性ホルモン(エストロゲン)、男性の場合は男性ホルモン(テストステロン)の量が減少することによって、様々な不調が現れます。
特徴としてはめまいや冷え、気分の落ち込み、関節の痛みなどがあり、他の病気を伴わないものを『更年期症状』、症状が重く日常生活に支障をきたす状態を『更年期障害』といいます。
人によって症状の現れ方には差がありますが、これは加齢・性格・人間関係なども関係しているようです。
実際『産婦人科診療ガイドライン』には、更年期症状の治療にあたり、患者の訴えに傾聴することの重要性が書かれています。
『有酸素運動』は更年期症状を改善する
「更年期は上手にやり過ごす」といわれていますが、確かにそれは的を射る考え方だなと思います。
更年期の期間は約10年。
個人によって差はありますが、永遠に続くものではありません。
加齢に伴う身体の変化のひとつとしてとらえ、あまり深く考え過ぎないことも大切です。
『ケセラセラ』の精神でできることを始めましょう。
まずは生活習慣を整えることです。
これは一番の対策ですので、バランスの良い食事や運動を普段から続けて50代に備えてください。
運動は下半身を鍛えることがポイントです。
更年期は基礎代謝が落ちるので、肥満になりやすいという特徴があります。
体型の変化が気になる方は、フロントランジで脂肪を燃焼させましょう。
【フロントランジ】
フロントランジは下半身の筋トレ+有酸素運動です。
ランニング・ウォーキングのようなリズム運動は精神を安定させるセロトニンを分泌しますので、更年期症状の改善にもピッタリ。
脚を交互に踏み出すだけなので、難しい運動が苦手な方にもおすすめです。
50歳を超えたら骨折に気を付けて

50歳を超えたら『骨粗鬆症』にも気を付けてください。
骨粗鬆症は「骨強度が低下し、骨折のリスクが増大した骨格疾患」のことで、『骨強度』とは骨密度と骨質を合わせたものです。
人間の骨は、古い骨を取り壊す『破骨細胞』と新しい骨を作る『骨芽細胞』の働きで骨強度が保たれていて、女性ホルモンのエストロゲンは破骨細胞の働きを抑える役割をしています。
つまり閉経を迎えたタイミングで生活習慣が乱れていると、骨の破壊が進み、骨強度は低下します。
転倒してお尻をうったり、手をつくだけで骨折してしまうのはそのためです。
とはいえ怖い病気ではなく、適切な対策をすれば予防は充分可能です。
健康診断で骨密度の低下を指摘された方は『筋トレ』を始めましょう。
負荷をかけながら筋収縮を繰り返すと骨芽細胞の働きが活性化し、骨を強くすることができます。
骨折予防トレーニングを3つ紹介
皆さんが筋トレを始める際は骨折しやすい箇所を重点的に鍛えてください。
高齢者の骨折で多いのは脊柱、手首の骨、大腿骨の3箇所です。
脊柱と大腿骨はスクワット、手首の骨は腕立て伏せで鍛えられます。
スクワットはベンチマークを利用して、腕立て伏せは膝をつくと比較的簡単にできます。
【スクワット】
【腕立て伏せ】
骨折しないカラダ作りのポイントはもう一つあります。
それは「転倒しない」ことで、転ばなければ深刻なケガは回避できます。
不安定な場所で運動をするとバランス能力を保つ小脳が活性化し、転倒しづらくなります。
ここでは室内でバランス能力を鍛える方法を紹介します。
【腕上げ一本立ち】
「令和4年人口動態統計(厚生労働省)」によると、高齢者の転倒・転落・墜落による死亡者数は10,809人。
これは交通事故による死亡者数の5倍以上です。
また、その中のおよそ6割が自宅で転んでおり、一般道路における転倒の約2倍を占めています。
あまり外出することがない方は今から対策を始めましょう。
あなたの「困った」を一緒に解決します

記事を執筆していて感じたことは『女性の方が早く大人になるが、その分身体の衰えも早い』ということでした。
『精神的にも肉体的にも女性の方が早く大人になる』といわれていて、実際に女子は男子より2年早く成長期が始まり、女性ホルモンも素早く増加します。
しかし男性ホルモンの分泌は徐々に減る一方、女性ホルモンの分泌は50代でほぼ完全に終了します。
その分身体の変化も現れやすいことは言うまでもありません。
「尿もれ」「便もれ」「臓器脱」「気分の落ち込み」「骨密度の低下」
このような症状でお困りなら、まずは専門の医療機関に相談しましょう。
とくに自分の話に共感、理解を示してくれる医師を探すことが重要です。
自分の辛い気持ちは、同じ境遇の友人や家族に打ち明けましょう。
今よりも気持ちがスッと和らぎます。
そしてトレーニングの必要性を感じた時は、ぜひ私たち運動指導者にもご相談ください。
あなたの「困った」に真剣に耳を傾け、全力で解決を目指します!
参考文献:産婦人科診療ガイドライン(公益社団法人 日本産科婦人科学会編)

