
【吉祥寺・久我山】アサーティブフィットネス、パーソナルトレーナーの小森祐史です。
皆さんは『肥満』=「好きなものを飲んで食べて身体を動かさない人」というイメージをもっていないでしょうか?
過食や過飲に運動不足。
生活習慣が乱れている人を「自己管理ができてない」と見る社会的風潮はとても強いように思います。
しかし近年、肥満=自己責任 という考えは思い込みであることがわかってきました。
『肥満』は現代の社会・心理状況が影響していて、誰でもなる可能性があります
そこで今回は、今まで個人の問題と捉えられていた『肥満』が社会問題である理由、解決するための考え方を解説します。
この記事は
・「肥満は自己責任」だと思う
・太っているのは「自己管理ができないから」だと思う
・自分の体型を改善したいが、SNSを見て自信がなくなってきた
という方におすすめです。
肥満になるのは「自己管理ができないから」ではない

私の友人にもふくよかな人はいます。
30分前に食べたばかりなのにまた食事をする人
病院でお酒を控えるように言われているのにやめない人
健康診断で高血糖という結果がでても生活習慣を変えない人、
皆さんの周囲にも上記のような行動をされている方はいると思います。
その人たちを見て「この人だらしないなー」「普段からずぼらなんだろうな」と感じた経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
お恥ずかしいことに、私も友人に対して以前は同じことを感じていました。
しかしこれらの行動を「自己管理ができないから」とみるのは誤りです。
何らかの理由があってそのように行動をしています。
その原因は大きく分けて4つ
過剰なストレスと脳の機能の問題、そして遺伝子と生育(生活)環境です。
過剰なストレスが肥満を引き起こしている

(景気悪化や政治的緊張、AIの急速な進化など)社会環境の変化に、(仕事や結婚、介護など)個人の環境の変化が重なるとそれは過剰なストレスとなります。
適度なストレスは血流を促して脳を活性化させたり、全身に酸素と栄養素を供給するなど身体に良い影響を与えますが、過剰なストレスは高血圧や高血糖、頭痛や腰痛、不眠など健康障害を引き起こします。
じつは『肥満』もその中の一つです。
ストレスホルモンの『コルチゾール』は肝臓でアミノ酸やグリセロールから糖を作り出し、エネルギーとして利用します。
しかし、慢性的なストレス状態になると、貯蔵量を超えた糖が中性脂肪に変わり脂肪細胞に蓄えられるので、それが結果的に肥満に繋がります。
また『コルチゾール』自体には食欲を促進する作用があり、過剰なストレスは食欲を抑える『レプチン』の分泌を抑制します。
これは心理学・生理学的な要因なので、「管理不足」という言葉とは無関係です。
脳の機能も原因です

また「飲んで・食べる」ことには脳の機能が関与しています。
人の食べ方は以下の3つのタイプに分けることができて
①補給系・・・・お腹がすいたら食べる人
②習慣系・・・・お腹がすいてなくても時間になれば食べる人
③報酬系・・・・お腹がすいてなくても食べることに病みつきになる人
この中で一番太りやすいのは③の報酬系です。
食後に血糖値が上がると、脳の満腹中枢が食事をとらないように指令をだしますが、このメカニズムが狂うことがあります。
そのキーワードは『ドーパミン』。
ドーパミンとは脳内で分泌される神経伝達物質の一つで、やる気や集中力、快感、達成感などに深く関わっています。
報酬系の人は「おいしい」と感じるものを食べることで、この神経伝達物質が放出されますが、ドーパミンは行動を強化する物質なので、一度放出されると食事が終わってもさらに「おいしい」と感じる食べ物を探し続けてしまいます。
結果、それが過食や肥満に繋がります。
これは脳の機能の問題なので、自身の意志でコントロールできることではありません。
遺伝的に太りやすいタイプの人がいる

生活習慣を整えて運動を継続することは体重管理の基本ですが、誰にでも当てはまる方法というのはありません。
というのは、生まれもった遺伝子が「太りやすさ」に関係していることがわかっていて、「肥満の発症には遺伝が4~6割ほど関与している」という調査結果もあるほどです。
一つ例を出すと、出産前後の環境によって「太りやすい体質になる」ことが分かっています。
低出生体重児は「省エネで生き抜くための変化」が遺伝子に発現し、出生後に太りやすくなります。
加えて、乳幼児期の過剰な栄養摂取は脂肪細胞の数を増やすため、大人になってからも痩せにくくなるのです。
消化・吸収・代謝の能力や腸内環境などにも個人差があることを考えると「画一的なダイエット法」というのは存在しません。
肥満の改善には、個人の体質や生活に合わせた減量が必要です。
生まれた環境が問題を大きくしている

生育環境も体型に大きく関係しています。
国連WFPの報告によると「先進国において経済的に余裕のない世帯や低所得層ほど肥満の割合が高くなる」ことが指摘されています。
野菜、魚、肉類など健康的な食品は高価である一方、ジャンクフードや菓子パン、スナック菓子などは安価でカロリーを手軽に摂取できて満足感もあるため、低所得者層の食事は栄養バランスが偏りがちです。
また、保護者自身が多忙だと食事が不規則になり、運動にかける費用や時間も少なくなるため、それが肥満につながりやすくなっています。
そして上記で指摘したように、乳幼児期の過剰な栄養摂取で痩せにくくなることも問題に拍車をかけています。
『肥満』と『肥満症』の違い

ここで少しお話は変わりますが、『肥満症』という言葉をご存知でしょうか?
『肥満』と『肥満症』は違います。
『肥満』とは「脂肪が過剰にたまった状態」を指し、BMI(体格指数)が25以上の人がこれに当てはまります。
一方『肥満症』とは、肥満が原因で高血圧や高血糖、脂質異常症などの健康障害を併発している人のことを指します。
より深刻なのは後者で、各疾患を予防・改善するためには医学的な減量が必要です。
『肥満症』の問題は身体だけでなく、こころにもダメージがあること。
当事者や医師、一般の方を対象に実施した意識調査の結果によると、「肥満症患者の9割、医師の6割、一般生活者の7割が『肥満は自己責任』と考えている」ことがわかりました。
当事者が悩んでいるところに周囲の無理解が重なると、それは大きな負担になります。
社会的な抑圧と過剰な自己非難で心と身体を壊れてしまうのが『肥満症』なのです。
『肥満症』で悩んだ時は専門家に相談を

ご自身の体型や疾患で悩んでいる時は専門家に相談しましょう。
繰り返しになりますが、『肥満症』は様々な要因が重なって発症するため、お一人で改善するのは非常に困難です。
重篤な合併症につながる可能性があるので、まずは医療機関を訪れるようにしてください。
さいわい専門的な治療を受けられる場所は増えていて、医師や保健師、管理栄養士、パーソナルトレーナーなどの専門職がお一人おひとりの生活環境に合わせた治療を提供しています。
治療は食事・運動療法などライフスタイルの改善からスタートします。
それだけでは不十分な場合、薬物療法や外科手術もあります。
このように二段・三段構えで減量を目指せるのが肥満症の治療です。
今までお一人で悩んでいた方も安心してご相談ください。
「自己責任」と非難する前に

この記事の最後は同業者の方に向けて書きます。
「肥満は自己責任」という考え(思い込み)は社会に強く根付いていますが、それは専門職も同じです。
先ほど紹介した「医師の6割が肥満を自己責任と考えている」という調査結果は、私たちパーソナルトレーナーにも当てはまります。
SNSに目を向けると
「生活習慣を変えられないのは言い訳」
「食べ過ぎをやめれば痩せられる」
「運動しないから太る」
という強い言葉が溢れていますが、社会環境や生育環境、遺伝子などさまざまな要因で発症するのが「肥満症」です。
健康産業に従事する専門職が、このような言動をするのはかなり問題があるのではないでしょか?
そもそも今はAIがあります。
身体情報やトレーニングの目的を入力すれば、簡単にメニューを作成してくれます。
それは食事も同様で、生活習慣を変えるだけならスマホやPCがあれば事足ります。
それにもかかわらず、トレーナーに個人指導を受ける人の数が減ったようには思いません。
社会状況が不安定になったことでむしろ増えています。
なぜ、わざわざご自宅からジムまで通うのか?
なぜ、お金を払ってまで個人指導を受けるのか?
なぜ、相談しづらいことを赤の他人の私たちに話してくれるのか?
根本的なことから考える必要があります。
「肥満は自己責任」ではないし、生活習慣が乱れるのは「だらしないから」ではありません。
もし、私が病気になったとして他人から「自己責任」と言われたら傷つくと思います。
私達が今すべきなのは「非難」ではなく「受容」。
共感力の高いトレーナーが今、社会に必要とされています。
参考資料
あなたの肥満、治療が必要な「肥満症」かも!?(一般社団法人日本肥満学会)
https://www.jasso.or.jp/contents/wod/index.html
肥満と飢餓の「深い関係」(国連WFP)
https://ja.wfp.org/stories/feimantojienosheniguanxi

